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神代の物語9. 山幸、海幸神話

(やまさち、うみさちしんわ)
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海幸彦の釣り針なくした山幸彦、竜宮城で力授かりめでたく地上に返り咲き

神々の系譜はこちら。


  • 邇邇芸命は降臨後、笠沙(かささ)の岬で大山祗神(おおやまづみのかみ)の娘の木花咲耶姫命(このはなさくやひめのみこと)と出会い、結婚、3人の男子が生まれました。
    上から順に火照命(ほてりのみこと)、火須勢理命(ほすせりのみこと)、火遠理命(ほおりのみこと=日子穂穂出見命)。
    長兄の火照命は別名海幸彦といって、海で漁をするのが得意、末っ子の火遠理命は山幸彦と言い、山で狩猟するのが上手でした。
  • ある日、山幸彦は海で釣りをしてみたいと思い、兄の海幸彦の釣り針を借りることにしました。道具を交換したのですね。ところが、漁をしているうちに、山幸彦は兄の釣り針を紛失してしまったのです。
    注)この話は釣針喪失譚といわれてインドネシアなどにも同様の物語が伝えられています。
  • どう探しても見つからず、山幸彦は仕方なく家へと帰り、自分の剣を砕いて釣り針に作り直して兄に献上したのですが、兄は「もとの釣り針を返してもらおう」と言って許してくれませんでした。
  • 山幸彦は悲嘆にくれて海辺にたたずんでいました。すると、波間から塩椎神(しおつちのかみ)という老翁が現れて言いました。
    「わたしがいい方法を教えましょう」
  • 塩椎神は、竹の小舟に山幸彦を乗せて波間に押し出すと、船は海中に進んで行き、やがて魚の鱗が並んだような御殿にたどり着きました。それは綿津見神(わたつみのかみ)という海神の宮殿でした。
  • 宮殿の門脇の桂の木に登って待つといいといわれてそうすると、やがて海神の娘、豊玉姫命(とよたまひめのみこと)が出てきてどうしたのかと尋ねます。
  • 美しい姫と天孫の御子の恋。2人は綿津見神に祝福されて結婚をします。そしてそのまま山幸彦は海底にとどまり、あっというまに3年の月日が経ってしまいました。
    注)これはまさに浦島伝説ですね。
  • 山幸彦は、ある日、自分の本来の目的を思い出し妻に相談します。豊玉姫命は、綿津見神にそのことを話すと父神も頷き、海幸彦の釣り針を飲み込んでいた鯛を捕らえて針を取り戻すと同時に、塩満玉(しおみつたま)、塩乾玉(しおひるたま)の2つの宝玉を与え、山幸彦へ地上へ戻らせることにしました。
  • 再び大地を踏んだ山幸彦は、3年前に冷たくされた兄へ報復します。
    海神から授かった塩満玉や塩乾玉などの霊力を用い、海幸彦を翻弄。
    かくして山幸彦(日子穂穂出見命=ひこほほでみのみこと)はこの地の支配者となりました。
    注)この神話は、海の民である隼人(はやと)が筑紫朝廷へ服従したことを表すものといわれています。
  • そのあと身ごもっていた豊玉姫命がお産のために夫のもと地上にやってきます。出産が迫って、姫は夫に「決してお産をする姿を見ないでください」と言って産屋へと入ります。
    注)ここにも「見るなの禁」ですね。そう言われると見ないわけにはいきませんね。
  • 好奇心いっぱいの山幸彦。こっそりと産屋を覗くと、そこには身をもがく八尋(やひろ/一尋=180p)のワニの姿が・・・。出産後、夫の覗き見を知った豊玉姫命は恨んでわが子を置いて海へと帰って行くことになります。
  • しかし、豊玉姫命も母親、わが子のことはさすがに気になります。そこで妹の玉依姫命(たまよりひめのみこと)に子供の世話を頼みます。やがてその子が成長し、鵜葺草葺不合神(うがやふきあえずのかみ)として立派に成人すると、玉依姫命はその妻となり、4人の子を産むことになります。
  • その末子第4子が、神倭伊波礼毘古命(かむやまといわれびこのみこと)、つまり、日本第1代、後の神武天皇になるのです。

(05/06/26)

神代の物語10. 神武東征(じんむとうせい)へ続く。