つれづれ道草

すべてはどこかで繋がっている...

第6段 円周率3

今朝(2004/09/26)の日経新聞に、「円周率暗唱で世界記録更新」の記事が載っていた。

それによると、千葉県の原口證氏(58歳)がこれまでの記録を更新する5万4千桁の暗唱に成功したという。昨25日の2回目のチャレンジで達成、所要時間は約8時間45分。これまでの記録は同じく日本の大学生が1995年に樹立した4万2,195桁である。原口氏は、近くギネスブックに記録申請するという。

世界記録ともなれば「特技」(神技かも知れないが)と言えるから人は賞賛するだろう。わたしも「すごいなあ」というしかない。

だが、もっと低いレベルでの特技は、もう「トリビアの実」みたいなもので、人は「へぇ〜」と感心してくれないし、関心ももってくれない。

π=3.1415926535897932384626433832795028841971693…

上記は円周率を小数点以下43桁まで表記したのであるが、実はわたしはここまで暗記している。

しかしこの程度では、まったく人は相手にしてくれない。
よほど親しい人なら、「ふぅ〜ん」くらい言ってくれる。
そんなもの何の役に立つんだ、自分は覚えていないがそれは覚えても意味がないからだ、というわけだ。
家族なら少しは誉めてくれるかも知れないが、娘は「きも〜い」というだろう。「きも〜い」とは実に「きも〜い」言葉だ。

まあ、履歴書の特技にも書けず、その上、人に自慢もできないなら、もうこれはトリビア以下の役立たずの記憶としか言えない。

以上の前提のもとで、あえて言いたい。

π と記号化するのはまったく問題ないし、そうすべきだろう。

しかし、3とは何だ。

いったい文部省、文科省か、どちらでもいいが、これはいったいどういうことか!

事実を確かめたわけではないのでわたしの誤解かも知れないが、いまの小学生(中学生かも知れない)の算数で、便宜上、そうして計算しているらしいと聞いた。

だから、日本人の計算能力が落ちるんだ、とかいうのも少しある。
でもそういう理由より、なんといってもわたしは深遠なこの無限の数列を、小数点以下1桁もない自然数の3だけで表現することの無謀さがどうにも納得がいかないのである。

計算能力というより、子供たちの「宇宙、森羅万象の不思議を解明していく」そんな意識の萌芽をすべて摘み取ってしまうような行為だと思う。

円周率 π の数値にはまだまだ解明されていない謎が含まれているとわたしは思っているからだ。

電卓からコンピュータ、便利なエクセルなどの表計算ソフトの登場で、人は複雑な計算をする必要はなくなった。
確かに3.14を掛ける(足すことはまずない)計算は、わたし自身もあまり好きではなかった。 π の記号化はありがたかった。

26408×5.69とかいった計算能力を高める授業、修練は少しはやっておくべきだろう。
だがなにも円周率が出てくる問題、多分、円の面積や円周の長さを求めるときだろうが、そんな程度の計算で3.14を3にしてしまう必要はないではないか?

おおよその大きさを認知させようという魂胆なのか?
半径3mの円の面積は3×3×3=約27uと、さっと答えさせようという狙いなのか?
半径3mなんてそんな都合のいい数値が現実社会にあるわけもない。
公園の池は、実際は楕円で、長いほうが5.7m、短いほうが4.3m、そのとき
S=5.7×4.3×3.14 と
S=5.7×4.3×3
に、なにほどの違いがあるというのか。

また人は3.14と覚えていたとしても、計算上、概算でいいと判断した場合、それを3にして計算するという応用力を持っている。
その応用力の概念だけを教えてやればいいのではないか?
しかし計算させる訓練で概算数値でおこなうのはいかにもレベルが低すぎる。

とにかく円周率を3とする、意味のない便宜?だけはやめてもらいたいと思うが、皆さんはどう思われるだろうか。

円周率の覚え方

さて、自分でトリビア云々などとはいってみたが、あの43桁をどうやって覚えたのかここに記したい。(所詮、自慢話である)

わたしは数学は好きだったが社会などは苦手だった。
いわゆる「暗記物」だからである。
円周率を覚えるということは、数学ではなく、単なる暗記である。得意なハズはなかったのであるが・・・。

円周率を最初に習ったのは当時は現在より遅れていたから中学1年のころだったろうか。

そのとき数学教師が空で、
3.1415926
まで唱えた。教師は、調子にのって「ひとよひとよにひとみごろ」、「ふじさんろくにおーむなく」も唱えた。

純真だった(ああ、ため息)わたしはそのとき、不覚にもこれはすごいと思ってしまった。

その日、家に帰って、こんなすごいことが自分にもできるのかどうかと試しに暗記してみようと思ったのである。

さっきの43桁はそのときの教科書の1行に載っていたすべてである。
わたしはそれをわずか10分程度で記憶してしまった。
そしてそれは40年経ったいまでも覚えている。

わたしはまったくの自己流である次の方法でそれを覚えた。

[円周率の覚え方:自己流]

まずいくつかの語呂のいい区切りで分けてみた。

π =3.14159|26535|8979|32384|6264|3383|279|50288|4197|1693|

あくまでもわたしにとって言いやすい区切りである。ほかの人なら別の区切り方があるだろう。

3383と50288が言いやすかったのでその間はわずか279の3文字になった。非効率かも知れないがそんなのもあってもいい。

そしてどうしたかであるが・・・

まず、最初の区切りの3.14159を10回、空で唱える
次に26535を10回空で唱える

この次が肝心なのであるが、すぐ8979に移行しないで、また最初にもどり、こんどは一気に、
3.1415926535
と続けて10回、空で唱える。

そしてその後に初めて、8979だけを10回唱える
さらに 3.14159|26535|8979 を通しで10回唱える

これを最後の1693まで同じように続ける

以上が覚え方である。

なぜ43桁になったのか

わたしがあっと驚いたのは6264の部分を単独で10回唱えようとした直前だった。

そのときまでにわたしは 3.14159|26535|8979|32384 をすでに10回空で唱えていた

これはその朝、教師が唱えた桁数をはるかに超えているではないか!

これを自分がいま記憶してしまっているとはとても信じられない!
が、現実には唱えられる!

そう思うと、半信半疑ながらも行為にスピード感が出て、あとは一気に最終区切りの1693までたどり着いた。

夢を見ているような気分だった。
わたしは空で
π =3.14159|26535|8979|32384|6264|3383|279|50288|4197|1693|
をいま現実に唱えている。

それから何回かそれを唱えた。
確かに間違わずに言える!
こんなばかなことが、あるのか?

どうせ少し経てば忘れてしまうのだろう、と思った。

そうは思いながらも、興奮しながら、そして少し期待しながらその夜は床についた。

あくる日、通学途中、それを唱えてみた。

π = さんてんいちよん、いち・・・・・なな、いちろくきゅうさん

言える。

忘れていない。
が、まだ信じられない。

区切りを意識せずに一気に唱えてみる。

π =3.1415926535897932384626433832795028841971693

大丈夫だ。

ほんとうに自信を持ったのは1週間もたってなお暗唱できたときだっただろうか。

これがわたしが円周率を43桁、覚えた顛末である。

なぜ43なのかというのはそれしか当時のわたしにはデータがなかったのである。
もし当時の教科書にさらに何行か書かれていたら多分それも覚えただろう。
そのデッドラインが何桁なのかはわからないが・・・。
43*5 くらいであろうか。
1ページにわたって何百桁も記されていたら、おそらく現在のわたしはなかっただろう。

記憶に自信をもったわたしはその後、暗記物が得意になっただろうか?

残念ながら、それは、NON である。

参考 円周率の情報ページ「π の部屋」

(04/09/26)

円周率3騒動

「円周率3」については、この直後、調べてみると、事実とは少々ちがうことがわかった。これについては、秋田県の小学校の教頭佐々木彰氏が同氏のサイトのうんちく講座「円周率3騒動」でわかりやすく説明している。

これによると、小学校低学年のときのある特定の場合に、概算として3を使う、ということらしい。
当時の文部省の「小学校学習指導要領」が誤解しやすい文言だったようで誤ってマスコミで伝わったということだそうだ。

しかし、これも、いまから4年も前の話らしい。
当該年齢の子供がいない家庭のほとんどがあまり興味のない話なのだろうか、わたしの周りでも、結局はどのようにおちついたのか、あまり知らないようだ。

わたしとしては、なにか拍子抜けの気がするが、検索最中にわたしと似た考えをもつひとのサイトにも出会って、その面白い発想に驚かされた。

円周率はまったくランダムの数列に見えるようだが、実はある規則があるという。
それを音楽のコードに照らし合わせると、無限に続くある壮大な音楽になる、という。

これはわたしにも似たような発想があって、アデシン・グアニン・チミン・シトシンのDNAをつかさどる塩基の配列のように、もしかすると、宇宙、とくに空間の曲がりの微妙かつ美的なクレッシェンド曲線(わたしの造語である。こんな言葉は物理・数学用語などにはない)を表しているのではないか、と思うことがある。

なににせよ、いまひとつピリッとしないが、文部省(4年前はこういう名か?)は、批判をかわしたらしい。
もちろん、「円周率3」大歓迎、という向きもいる。
でも、そんな人は、現在、掛け算の暗算なんてやらないでしょ?

(04/09/27)

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参考文献