つれづれ道草

すべてはどこかで繋がっている...

第18段 回文、不意か?

突然、回文をテーマにしたのは理由がある。

ちなみに回文とは、逆に読んでも同じになる文のことである。
いちばんシンプルなものでは、新聞紙(しんぶんし)。
これは単語で文とは言えないだろうから、竹薮、焼けた(たけやぶやけた)などがおなじみだろう。
日本語には同音異義の言葉がたくさんあるから簡単な単語程度のものはだれでもつくれる。

文化部幹部(ぶんかぶかんぶ)
漢文文化(かんぶんぶんか)
信金、禁止(しんきんきんし)
換金金貨(かんきんきんか)
等々

この段のタイトル「回文、不意か」も「かいふんふいか」で、実は回文である。
わたしは実は回文の正確な定義を知らない。上記のタイトルは濁音部分が正確ではないではないか、という人がいるかも知れない。
でも回文は確か、濁音や撥音便、音引きなどはなんとか許されるらしいと聞いている。まったく同一なら文句なしだが、逆さまに読むとどうにも意味をなさない言葉は無数にある。むしろ成立しない言葉のほうが多いだろう。
とくにカタカナ文字は難しい。
たとえばシンプルということばの逆さまはルプンシ。
これはどう切ってもなんとも料理できないが、濁音・音引き等が許されれば・・・る。分子・・・として前後に何か付け加えれば回文の構成要素として使うことが可能になる。

さて、前段、ミステリーをテーマにしたが、いわゆるマニアック・パズル的な「本格推理もの」で、見立て殺人とかダイイングメッセージ、また犯人からの挑戦状とかいったものになぜかこの回文が用いられることがある。
こうした言葉遊びがミステリーによく使われるのは面白い現象である。
なぜなのだろうか?

先日、ミステリーを取り上げた時を同じくして、偶然なのだが自分で回文をいくつか作ることになった。それはあるしりとり川柳サイトをみつけて「これはおもしろいな」と思って参加したのが発端である。

それはとくに回文である必要はなかったのだが、普通に作るのも芸がないかなと感じて、試しに回文にしてみようと思ったわけである。

最新の投稿者の川柳が
・・・・・ ・・・・・・・ 掴みたい
で終わっていたので普通は、
掴みたい この世のダイヤ 独り占め
なんていうので十分なのだが、ちょっとひねって回文にしてみようと思ったのである。

それで投稿したのが、

掴みたい 童を妾 痛み克つ
(つかみたい わらわをわらわ いたみかつ)

実は、わたしは回文とは面白いものだとは思っていたが、実際に作ってみたのはこれが最初なのである。
でも、サイト管理者のお世辞もあってすっかりその気になったのだが、しりとりと回文とは両立しないことがその後、すぐに判明した。

サイト管理者も負けずにこれに続いてしりとり回文を作ってこられた。

悼み且つ 逝く者も悔い 塚見たい
(いたみかつ いくものもくい つかみたい)
これもなかなかの力作なのであるが・・・。
さて、次の方はどう続けるか?
・・・・・
勘のいい人はもうお分かりと思うが、字は異なっていても、これはいつまでも
「いたみかつ・・・・・つかみたい」と
「つかみたい・・・・いたみかつ」
の繰り返しになってしまうのだ。
これではしりとり企画そのものが破綻してしまう。
WEBで言えばcgiの暴走というところか。
丁寧にお詫びして回文はそれでおしまいにしてしまった。

ミステリーと回文

ところが、である。
ミステリーに関する前段を記すきっかけとなったJOKER氏(氏の名前が出すぎると叱られたが)が、その顛末をわたしの掲示板で見て、「いよいよ回文ブーム到来か」などと書き込みしてくれたのである。
彼もやはり大のミステリーファンであるから回文にも昔、凝ったとあるので、これは何か彼の名を入れ込んだしゃれた回文を作ってみようと思い立ったのである。

JOKERのアルファベットの逆さまはREKOJ。これはどうにも使えない。
ジョーカーとカタカナで記すしかない。
敬語を入れてジョーカー様、その逆さまは、
「マサーカーョジ」
これは濁音や音引きをとりあえず除いてシンプルなものにすると、
「まさかよし」に集約される。
これはなんとかなる、という直感があった。まさかという言葉が含まれるからやり易い。
で、結局、作ったのが、次。

飲って寝て!ジョーカー様。まさか、止してね、徹夜。
(やつてねてしよかさままさかよしてねてつや)

回文はきちんと意味が通るものでなければ意味がない。
そして苦しいところを架空の人の名前などで入れ込んでは駄作となる。
意外と簡単にできたのが不思議と言えば不思議である。

それで調子にのって氏のサイトにいくつか連作を披露してしまった。
ミステリーの掲示板なのに回文ならぬ怪文ばかりで少し気がひけたのだが、そのかわりといってはなんだが、ミステリーに関連する語句をいれこんだものを作ってみた。

ただ2作目は、初対面のアクロというハンドルネームの方からごあいさついただいたので、こちらのあいさつと専用アイコンのことを兼ねて作ってみたのだが・・・。

行け!6案、変身カフカ。ん?身辺?アクロ兄
(いけろくあんへんしんかふかんしんへんあくろけい)

こういうムリがあるのは駄作である。

しかし、JOKER氏のお世辞などで調子にのったわたしはそれ以降、いくつか書き込みしてしまった。きっと常連の方々の顰蹙をかったにちがいない。

それが以下。

異天体・冥界・・・確かな推理。揺りイス泣かしたいかい、名探偵。
(イテンタイメイカイタシカナスイリユリイスナカシタイカイメイタンテイ)

遺産、帆船か金塊か?快感鬼、完全犯罪。
(いさんはんせんかきんかいかかいかんきかんせんはんさい)

殺人を威張り、厚し罪。密室アリバイ、温室さ。
(サツシンオイバリアツシツミミツシツアリバイオンシツサ)

この辺りで、もう回文マニアという称号をいただいた。
まだ生まれて5作目だというのに。

御手洗ファンに捧ぐと題して、
イカンな和巳、潔の留守は。パズルの初期、ミスか、難解。
(いかんなかすみきよしのるすははするのしよきみすかなんかい)

(島田荘司というミステリー作家をご存知なら名探偵、御手洗潔とワトソン役の石岡和巳は周知のことだろう)

さらに・・・

移転だ、敵退散!反戦歌に凱歌!しかし、階下に完全犯罪だ!来て、探偵!
(イテンタテキタイサンハンセンカニカイカシカシカイカニカンセンハンサイタキテタンテイ)

お手軽なところで・・・
無限失策の血見る、陸奥殺人ゲーム
(むけんしつさくのちみるみちのくさつしんけむ)

そして、もう少し長いものをと、

ネタ本等、我が十重の死マジック巣窟。理と機転で、天敵トリック・嘘くづし。マジの江戸川乱歩だね。
(ねたほんらわがとえのしましつくそうくつりときてんててんてきとりつくうそくつしましのえとかわらんほたね)

JOKER氏のサイトはRPGのことも紹介しているので・・・

傷ついた臨死の騎士、古巣来て、つひに偉戦士は死。ヒール!あ、嗚呼、むなしく死なむ、嗚呼!RPGは、人生に匹敵する不思議の真理。大っ好き!

(キスツイタリンシノキシフルスキテツヒニイセンシハシヒルアアアムナシクシナムアアアルヒシハシンセイニヒツテキスルフシキノシンリタイツスキ)

と都合、9作。2週間。
ひとつひとつの所要時間は早いものは5分、平均1時間程度か。
最後のRPGの反転(あーるぴーじー→あるひし→しひるあ→・・・死。ヒール!あ、・・・)の処理には少々時間がかかった。「しひるあ」の中央部を「昼」や「蛭」の言葉ではうまく前後が続かずどうしても意味を成さなくなってくるのだ。RPGの回復呪文のヒールを思いついてなんとか繋げた。また、傷ついたをひっくり返して「たいつすき→大っ好き」を見つけたときはさすがにうまくいった!と思った。

ところで、なぜミステリーと回文なのだろう?
前に書いた地球上をまっすぐ進むと同じところに戻ってくる、無限と有限・・・そんな事象となにか繋がっているのかも知れない。

それは、わたしの、
「無限ゲーム」(むけんけむ)。

(以上、JOKER氏に捧げる拙文、その2)

(05/06/02)

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