つれづれ道草

すべてはどこかで繋がっている...

第14段 AB型の不思議(前)

先日、血液型のまれな遺伝のケースをモチーフにしたミステリードラマをやっていた。
ほとんど内容は見ていなかったのだが、血液型と言えば、かなり昔の話になるが過去に現実のわたしの身の回りでとくに不思議に思うことがあったのでそれを今回は話してみたい。

しかしながらその話に移行する前に少し血液型についての昨今の話題と簡単な基本知識をこの段で紹介しておこう。
ここ最近、血液型による性格判断に関する番組を見かけるが、これを根拠のないこととして自粛を促す向きもある。
これについては、娯楽番組だし、基本的に大概の人は人類の性格を単なる4タイプにわけて考えるなんてことはありえないと思っているだろうから、それほど目くじらをたてるほどでもないのではないかと思う。
まったく該当しないことや例外も多々あることをみんな承知の上で、それでも言われてみれば多少そんな傾向があると言うくらいで半分占い的に楽しんでいるだけにすぎないのではないだろうか。
企業での雇用などで血液型によって差別するとか、経営者と相性があわないタイプの人を不当に扱うなどということはあってはならないことだが、現実にはそんなことはほとんどないだろう。
また、この4月(2005)には個人情報保護法が施行されるからあまりタレントや有名人などを含めて他人の血液型を斟酌できなくなるだろうから必然的に自粛になるかも知れない。

さて、血液型の話はもうかれこれ15年ほど前に一時、話題になったことがあった。能美正比古という人が「血液型人間学」という著作を出したころだっただろうか。この説には現在でも賛否両論があるがそれだけ話題性があるということだろう。
その当時、わたしの勤務先でもそうした話題がひんぱんに行われ、あの人はマイペースだから絶対B型だとかすごく几帳面な人をA型にちがいないとかいうそんな血液型推理ゲームがはやった。
だいたいAかOとか2種の候補をあげればかなりの確率で当たったりしていたからあながち根拠がないものではないかなというのが印象としてある。能美正比古氏の研究でもかなりのサンプルを調査したとなっている(これにもその妥当性について異論はあるが)。だからこそ現在も「まあそう言える場合もある」と思っている人も多くなっているのではないだろうか。
この血液型性格判断について一言のもとに却下し毛嫌いする人もなかにはいる。それには何か特殊な理由があるか、またはいやな体験があるからであろうか。それともはっきりと科学的根拠がないままの性格診断そのものが嫌い・ナンセンスということかも知れない。

しかし、今回はこの血液型による性格判断がテーマではない。

血液型遺伝の基礎知識

性格診断がひとしきり話題になったときに血液型の遺伝の話に移行したことがあった。
そんなとき、わたし自身が提供するのはもっぱらわたしを含めた実の4人姉弟の血液型のことである。
これがわが家のことながら見事に4つのタイプに分かれているのである。
つまり、長女O、次女AB、三女B、そして長男のわたしがAと血液型のすべてがそろってしまった。
こういうケースは両親がAとB、ただしAO型のAとBO型のBの組み合わせからしか生まれない。わたしの親もまさしく父親がB(BOである)、母親がA(AOと断定できる)であった。

ここで基礎知識だが、血液型は2タイプの因子で構成される。O因子は劣性なのでAOやBOはそれぞれA、Bという検査結果として出てくる。O型は正しくはOO型になる。日本人の血液型の構成はA、O、B、ABの順で大体4:3:2:1の割合になる。人口1億2,000万人とすればA型は4,800万人、AB型は1,200万人となる。2つの因子があるということだからA型とB型にはそれぞれAA型とBB型の存在も考えられる。
日本人というか人類のA型やB型は大多数がAOとBOでありAAとBBはAB型よりさらに少ない。しかし、まったくまれというわけではないらしい。少ない順にいえばBB、AA、AB、BO、OO、AOであり、AA、BB型はともに数%ということである。

さて子供の血液型は親の血液型の因子の掛け合わせで決められる。
わたしの実家の場合、下の図のようになる。

血液型組み合わせ

一般に子供が4人いて、それが「養子」とか「出生時の間違い」等がない両親からの実子であるとして、それが4タイプの血液型にそれぞれ分かれて誕生した場合。それだけで、そのうちのAとB型の子供は、それぞれAAではないAO、BBではないBOということが必然的に決まる。
また同様に、両親についてもAAではないAO、BBではないBOであることが確定する。
この組み合わせしかありえないからである。


こうしたまれなケースを除いて、A型と判定されてもそれがAAなのかAOなのかはふつうの検査ではわからないが、ほかにAB型とAB型の両親の組み合わせの場合のみ簡単に判定が可能である。この場合の子供は、A、BおよびABの可能性があるが、AとBはAAとBBになる。両親にO因子がないからAOのようなA型などは発生できないからだ。

ところが、ABは4つの血液型ではいちばん少数であり、そんな少数のAB同士の婚姻自体も少ないケースとなるわけだから、おのずからAA、BBの子供が生まれるケースも少なくなると言える。さらに理論上、確率的にもAB同士の両親の子供の血液型の発生比率もA:B:AB=1:1:2であるわけだから、AAやBBではなく、だいたいはAB型となってしまうだろう。

わたしの実家の4人姉弟のように子供だけで4タイプがそろうケースは珍しいと言えるだろう。どんなに子供を多くもうけても全部の血液型がそろわない家族のほうが多い。子供だけでそろってしまうのはわたしのAO+BOの両親の場合だけであるが、親子あわせてそろう場合としてはABとOの場合がある。その場合、子供はAとBしか生まれないからうまくいけば2人目の子供誕生で親子4人で4タイプがそろう。
わたしの場合、うまく最小人数の4人で出揃ったが、可能性として極端に言えば4人すべてがA型の可能性もあれば、OAOAと同じ血液型が続く場合のほうがむしろ現実にはありそうだ。少子化の現代、家族で4タイプそろうのはわたしの実家のケースよりはAB+O一家のほうが確率が高いかも知れない。

前置きが長いがもう少し。

AB型遺伝の特異性

問題はAB型の話である。
O因子が含まれないAB型の親から生まれた子供の血液型について。
以下、少なくとも1人の親がAB型だった場合の子供の発生する血液型のケースを表にしてみた。

AAやBBが入ると分かりづらいのでシンプルにしてみる。

親の血液型 AB
AB A,B,AB A,B,AB A,B A,B,AB

ここで注目されるのは、

という特徴だ。
とくに2つ目の特徴については、血液型で性格も似るという傾向がもし真実であるとしたら、どんなにたくさん子供を生んだとしても、ABとOの親からは、親とは性格の違う子供しか生まれない、という結論になってしまう。遺伝そのものが親子の相似性を物語るというのに、これでは本末転倒というしかない。血液型性格診断というのも、ある意味でこのあたりに限界があるような気がする。わたし自身はけっこう当たっているとは思うのだけれど。

さて、ABの親がいる家庭にはO型があらわれないとか、ABとOからは親の血液型と同じ子供が生まれないなどという、上記のAB型の法則は絶対なのだろうか。

ところが現実にはそうでないケースが、わたしのよく知っている人の家族で実在していたのである。
次の段に記す実にミステリーな話は、このABとOの夫婦とその実子ふたりの話なのである。

(05/01/08)

前段|第14段|次段

前段|第14段|次段

参考文献