狸の巻物 神社・神話の巻

神代の物語3. 誓約

(うけひ)
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素盞鳴尊が暇乞いのため高天原へ向かった際、誤解して武装した天照大神との間で身の潔白の証明のために行われた儀式。

神々の系譜はこちら。


  • 三貴神の天照大神、月読神、素盞鳴尊は、父神伊邪那岐命からそれぞれの領域の統治を命じられましたが、ひとり素盞鳴尊だけはその任務を遂行せず、母である伊邪那美命のいる根堅州国(ねのかたすくに)へ行きたいと言って泣き叫ぶのです。
    注)うーーん、駄々っ子みたいですね。こんなところが日本の神様は親しみやすいという感じがしますね。
    しかし、母の国と言っても、素盞鳴尊は伊邪那岐命と伊邪那美命の子供というより、神話では父神である伊邪那岐命のほうの鼻から生まれたわけですから、母はいないのですよね。もしかするとその事実を知らされていないゆえに、まだ見ぬ母を慕うというのかも・・・。
    ちなみに、三貴神とはいわれるものの、目はいいのですが、鼻は不浄のものとされていたようで、そこから生まれた素盞鳴尊は姉と兄とは一線を画されているような気がします。
    末っ子だし、いじけたとしても気持ちは分かりますね。
    兄の月読神はあまりエピソードはないのですが、この神もけっこう乱暴モノのようで弟を可愛がるような雰囲気はないようです。
  • 手を焼いた伊邪那岐命は怒って、「お前は、ここには住んではならない」と素盞鳴尊を追放することにします。
  • 素盞鳴尊は、「では、姉の天照大神に暇乞いをしてから母の国へ」と言って、天上界の姉の神殿に向かいます。
  • 天照大神は、素盞鳴尊の荒々しい足音が近づいてくるのを神殿で聞き、
    「弟は高天原の支配権を自分から奪いとろうとしてやって来たのだろう」
    と思い、武装して彼を待ち受けました。
  • 素盞鳴尊はそういうつもりはなかったわけで、懸命に弁解をしますが天照大神は信用しません。
    これは神に伺いを立てるしかないということで、姉弟は占いで決着をつけることにしました。

誓約とは占いのようなもの。内容が異なる古事記と日本書紀

  • この占いが誓約(うけひ、宇気比とも書きます)の神話なのですが、その内容は古事記と日本書紀で正反対というほどちがっています。
  • 誓約とは、単純に言えば、コインを投げて表なら勝ちとかいう占いなのですが、素盞鳴尊と天照大神の場合、それぞれの剣と珠を使います。
  • 剣と珠のそれぞれから、また神々が現れるのですが、それが男女のどちらであるか、で勝ち負けを決めるのです。が・・・。
  • 古事記では、素盞鳴尊の剣からは宗像の三女神が生まれ、天照大神の珠からは天忍穂耳神(あめのおしほみみのみこと)以下5神の男神となりました。
  • 素盞鳴尊は「わが心清く、わが生める子は手弱女」として、身の潔白を証明できたとします。これは古事記。
  • ところが日本書紀では、素盞鳴尊の生んだ子は男神で、今度は「男神だから自分の勝ち」となります。
  • いずれにせよ、素盞鳴尊の勝ちとなるのですが、古事記では女神重視、日本書紀では男神重視の見解をとっていることになります。
    注)これには、面白い歴史的背景があるようですね。しかし、この詳細についてはいろいろ異説もあるようです。
  • で、誓約で身の潔白が証明された素盞鳴尊は、喜びのあまりに神殿に糞をするなど、また乱暴狼藉の限りを尽くすのです。
    注)しかし、この態度もまた、すごいものではありますね。
  • 後に素盞鳴尊は高天原から追放になるとは言え、天照大神の失意は大きかったことでしょう。
    それが次の天岩戸隠れ(あめのいわとがくれ)の神話へと繋がっていくのです。
    注)この誓約では詳細において様々な説があるとは言え、占いの結果は素盞鳴尊の勝ちなのですが、重要なのは天照大神の直系の子孫として神武天皇に繋がる天忍穂耳神(あめのおしほみみのかみ)が生まれたということではないでしょうか。

(05/06/16)

神代の物語4. 天岩戸隠れ(あめのいわとがくれ)へ続く。