つれづれ道草

すべてはどこかで繋がっている...

第10段 秋葉原と不自由

東京言葉でも、ちょっと面白いあるいはおかしいなと思うものもある。
今昔で2つの例を挙げてみよう。

そのひとつは「秋葉原」、正確に言えば「あきはばら」。

最近はメディアの発達のせいか地方出身者も東京に出てきてすぐに標準語に慣れてしまうようだ。
わたしが上京したときはおのぼりさんという言葉がまだ健在のときで、当然、わたしもその一人だった。
東京言葉は垢抜けていて憧れに近いものであると同時に、郷里の言葉はなんときたない田舎臭い言葉かと思ったものだ。
そんななかで、東京独特の読み方で妙な違和感のある言葉があった。
それが、あきはばら、である。

東京23区の地図で最初に見たとき、わたしは、あきばはら、と読んだ。
しかし、初めて山手線(当時は、やまて線)に乗ったとき、車内アナウンスは「次は、あきはばら、あきはばら〜」。

なんだ、これは?と思った。
秋葉は「あきば」ではなく「あきは」だと言うのか?
また原を「ばら」と言うのが、ばらばら、ばら肉、なんとかばら(風情の意味)のイメージとだぶってなんとなく野暮なドロクサイ感じがしたものだ。

ところが、それから10数年経ってやっとわたしも東京人らしくなってきたと思っていたら・・・。
ここ数年になって電気街が世界的名所になってから、「アキバ」という省略形が使われ始めた。

これがこれでどうもしっくりこない。

すっかり東京に慣れた身にすれば「アキバ」は「あきはばら」に少しも似ていない。
もともと秋葉原が「あきばはら」だったなら「アキバ」の省略形は妥当であろう。
東京人の秋葉原はアキバでなくアキハバラと言わなければそぐわないという気がする。かといって濁らないアキハでは言い辛いし。
極端にはアッキャバラもしくはアキワバラとさえ言う人もいる。アキバにはそれらの俤はどこにもないのだ。

そういうわけで、東京人かぶれのわたしには、省略形の「アキバ」を使うのには抵抗がある。
しかし、「アキバ」がグローバルスタンダードの電気街を象徴するブランド名として、世界に浸透していくことは間違いないのだろう。

以上(04/10/30)

元祖はやはり「アキハラ」

なんのことはない。
秋葉原ホームページを見ると秋葉原の歴史が載っていてそこにはプロローグとして秋葉原(あきはばら)の由来が紹介されている。
それによると・・・(以下、転記です)

・・・1869(明治2年)の相生(あいおい)町の大火を機会に、当時の明治政府下の東京府は9000坪(約3万u)の火除地(ひよけち)を当地に設置し、翌1870(明治3年)年に、遠州(現在の静岡県)から火除けの秋葉大権現(あきばだいごんげん)を勧請(かんじょう)し、鎮火神社としてまつった。
 当初は鎮火原と呼ばれたが、鎮火神社が秋葉神社(あきばじんじゃ:現在は台東区松が谷に移転)と改められると、「秋葉原(あきばはら・あきばっぱら)」と呼ばれるようになった。
 現在、「あきば」と略されるのは、このあたりが語源となっている。

 1890年(明治23年)に上野から鉄道が延長されて、新しく当地に駅が開設されることになり、駅名は「秋葉原(あきはばら)」と名付けられ、その名前が一般化し、全国的には「あきはばら」という読み方が定着していく。

なんだ。やはり最初は「あきはら」だったのだ。
でもこの説明だけでは、駅名が付いたときにどうして一気に「あきばら」に変化してしまったのか、そのいきさつがわからない。
秋葉原ホームページさん、そこのところ、ひとつよろしく。
(05/01/08)追記

不自由な発音

さて、もうひとつは、つい最近、と言ってもここ半年ぐらい前からの話なのだが、やはり電車内のアナウンスから聞いた言葉である。

それは、「不自由」という言葉、今度はそのイントネーションについてである。

まず、前提として、わたしは不自由は[fújiyû]という発音が正しいと思っている。「ふ」にアクセントがある「じゆう」が本来の発音ではないのだろうか?

これが間違っていたらミもフタもないのだが・・・。まずこの前提で話をしたい。

ことし(2004年)の春先くらいだったろうか、常磐線の車内アナウンスが変わった。女性アナウンサーの録音テープで英語の案内も加えたものである。

そのナレーションの中で、シルバーシート(優先席と現在は言い換えている)では席をお譲りください云々がある。その前に「・・・の不自由な方」という言葉が入っている。
最初、何か違和感があったのだが何回か聞いていて、やっとそれが「不自由」の発音のおかしさからきていることに気がついた。

そのときわたしは思った。
「このナレーターの女性は茨城県出身なんだろうなあ」
ナレーションでは不自由が[fujiyúu]になっていたのである。
「ふじう」である。
これは、おかしい。
常磐線には困ったものだ、とも思ったが、地域特性が出ていいのかもとも思い直した。

しかし、しばらくして、山手線(やまのて線)に乗って、驚いた。
同じ不自由[fujiyúu](ふじう)がここでも使われている!

常磐線だけではなかったのだ。全線共通なのである。

おいおいどうなってるの?
もしかしてわたしのほうがまちがっているのか?

社の同僚ほかに聞いてみると、なんと、意見はバラバラ。
「どっちでもいいんじゃないの」が多いのである。

そこで考えてみると・・・。

不自由は「不」+「自由」である。
で、「自由」の発音はどちらかというと[jiyúu]である。
とすると不自由の発音は・・・。

なんと![fu+jiyúu]のほうが正しいのか?!

わたしの[fújiyû]は「不自」+「由」、これを別の字に当てはめてみると富士・優?
これはさすがにヘンではないか。

その後、何ヵ月も続けて車内アナウンスを聞いていると、最近では「ふじう」のほうが耳慣れてきてしまって、あと少しでそのほうが違和感がなくなってしまいそうである。

そうならないうちに、真相を知りたいものだ。
だれか知ってる人はいないだろうか?

(04/10/30)

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