イントロの刺身

イントロとはさわりだけ。
ちょっと調べてみただけ。
だれか様の受け売り。
でも見た目だけは旬なもの、
撮れたてのものにしたいナ。
なんてったって刺身って
言ってしまったけんね。

TOPページわびさび写真館>イントロの刺身9品目:香箱蟹

蟹とは子を食べるものである

おそらくほとんどの人は表題を見て?と思うでしょう。
蟹(カニ)ミソならまだしも蟹子?蟹に子なんてあった?蟹って身がおいしいじゃない?どうして?というふうに。
しかし、北陸や山陰など日本海側に住んでいる人なら、「そのとおり」という人もきっといるハズです。
今回は、その主役、香箱蟹(こうばこがに)という名の蟹の話をしましょう。
これは、タヌポンの Columbus Blog 05/01/16付の記事 をご覧いただくと分かりやすいので、以下、転記します。

「香箱蟹とヤドカリ」

東京にきて驚いたことのひとつに東京人のカニ好きがある。 「カニはうまいねえ」「ああカニが食べたい!」 「生まれ金沢だって?いいなあ、カニいっぱい食べたでしょ」 などととてもうるさい。 まあ、その気持ちは分かる。カニはたいへんおいしい。

しかし、最近は少し分かっている人も出てきているのだが、 金沢のカニは東京人の言うカニとは基本的にちがうのである。 申し訳ないのだが、東京人がうまいうまいと喜んでいるタラバガニは とてもカニとは認められない。 現実にタラバはヤドカリの一種でカニではない。 あくまでも比較論であってわたしはタラバが嫌いではないし まずいというのではない。

ただ東京人が「北陸はカニが食べられていいねえ」という場合、 そのカニはタラバを含めたカニという総称で言ってもらいたくない。 「ああ、知っている、ズワイガニでしょ?確かにズワイのほうがおいしいかも」 おいしいかも、ではない。雲泥の差がある。 しかし、それでもまだ意味がちがう。

金沢人のいうカニとは香箱蟹(こうばこがに)のことを指すズワイガニのメスだけをそういう名で呼ぶのである。 これ以外はカニとは認められない、というくらいにわたしは思っている。
わたしは魚卵が好きなのだがカニの子も当然、好物で、 実はこの世でいちばん好きなのがこの香箱蟹の子なのである。
香箱蟹の子には内子と外子の2種類があってどちらも美味なのだが とくにカニミソに包まれた内子がたまらない。 これ以上においしいものをわたしはまだ知らない。

香箱蟹はこの子を食べるのがすべてである。 オスのズワイガニと比べて体は小さいし身は少ない。 したがって金沢人(少なくともわたし)のいうカニとは この香箱蟹の子に集約される。 東京人のいうカニの概念と明らかにちがうことがこれで分かるだろう。

北海道の毛ガニもおいしいし花咲蟹(これもヤドカリ類)も珍しいが、 それは金沢の香箱蟹を食することとは基本的にちがうのである。 だから東京で「カニを食べにいこう」と誘われてもあまり乗り気にならない。 香箱蟹が出てくることは100%ない(あるとすれば高級料亭だろうか)し、 他のカニでもおいしいが身をとるのがとても面倒臭い。

コンテンツのイントロの刺身で冬の旬のものとして香箱蟹をと思ったが、 なんと1月10日で今冬のカニ猟が締め切りとなっている。 乱獲を避けてそのように決まっているのだ。 値段も年々高くなるようだ。 オスだけ注文しても実は意味がないのだが 香箱蟹を知らない東京の人ならそうするだろう。

かくして香箱蟹の撮影はできず、 コンテンツ作成は今年の年末まで待たねばならなくなった。

(ほんとうは香箱蟹の存在はあまり大都市に知られたくないと思っている。みんなが注文するようになったら、値がさらに上がり庶民にはとても手に入らなくなる恐れがあるからだ)

ズワイガニ、松葉ガニ、越前ガニ、セイコガニとは?

ということで、香箱蟹は「ズワイガニのメス」なんですが、これは金沢近隣だけの呼び方のようです。
ここで、他の地域での呼び方を簡単に紹介します。
一般にズワイガニと呼ばれるカニは、学名がマツバガニで、
そのうちのオスをズワイガニ、メスをセイコガニと呼ぶらしいのです。
これが混同されているほか、各地域でブランド名などがいろいろ付いているようなのですが、
調べてみるとだいたいは以下のようになっています。
(わたしの郷里である金沢地区以外は確かではありませんのでご了承ください)

で、とうとう、昨年末(2005/12/30)にネットで注文して手に入れた香箱蟹が以下。
久し振りに食べたその味は、やはりまちがいなく美味しいの一言に尽きるものでした。

香箱蟹の梱包 香箱蟹の外観

5杯で12,500円、1杯2,500円とやはり高いです。(そのときの相場によります。これは若干、高めのときか?)
もっともオスのズワイガニも大きくて食べがいはありますが、結構、高価ですよね。
写真の香箱蟹の大きさはズワイガニと比べて2周りも小さいですが、これでもメスとしては中型なのです。
甲羅の大きさはヨコの長いところでもせいぜい10cm程度。足も太いところで1cmしかありません。
とてもコストパフォーマンスが悪そうに見えますが・・・。

主眼は、コレ。香箱蟹の子。

香箱蟹

なんといっても、香箱蟹は、その子がすべて。
左の写真で見えるオレンジ色のものと、茶色のものの2種類のカニ子がミソ(蟹ミソという意味ではありませんよ)なのです。

たったこれだけで2,500円×2=5,000円とはちょっと高いですが、価値はあります。

外子と内子

これが圧巻

香箱蟹外子盛り付け 香箱蟹内子

左が外子。右が内子。
外子は酢醤油をつけて食べます。茶色のヒゲのような筋の部分をつまんで酢醤油に少し浸し、そのまま口に入れ、上下の歯で少しずつ漉し取るようにして筋だけを残して食べます。
筋はだんだん先のほうへと細くなっているので恐らく途中でプツンと切れてしまいますが、少々食べても問題ありません。
タヌポンが小さい頃は、この外子のほうが好きでした。
しかし、年齢が経つにつれ右の内子のほうがだんぜん好きになり、現在ではその差がかなりついています。
内子は酢醤油につけてもおいしいですが、何もつけずに食べてもとても美味です。
こんなに高価でなければもっとたくさん食べたいのですが・・・。

外子はここにある

香箱蟹外子

左の写真で外子の位置が分かりますね。
外子は蟹のお腹の部分を広げればすぐ分かります。
お皿のようにポッコリと取れます。

香箱蟹の剥き方

難しい、あるいは正しい、そんな剥き方ではありません。
自己流というか、いちばん簡単な方法。しかも、要点はひとつだけ。そんな方法をご紹介します。
下に1.2.3とありますが、肝心なのは1だけ。これだけ覚えていればいいのです。

1.親指で押す

香箱蟹の裏

写真で楊枝を挿してある部分。
蟹をひっくり返した裏側、顎のところ。
ここがポイントです。
ここに親指の腹を当てて、グッと下に押し込みます。
つぶすように力を入れます。
実はこれだけでOK。もう、ほとんど終わったようなものです。
とは言っても、単に押すだけで終わりというわけではなく、
押すとどうなるかですが、これで、上の甲羅がはずせるようになるのです。
この顎の部分だけが甲羅との接着点になっているわけで、
ここを取り外してやれば、甲羅以下、解体することができるのです。
どうです、簡単でしょ?

2.甲羅をめくる

香箱蟹の甲羅を取ると

親指で押した接着点がはずれると、甲羅をはがすことができます。
はずれた甲羅の口の部分を上に持ち上げてみてください。
ポカッと持ち上がります。
甲羅を持ち上げてフタを開けたところが左の写真。
ちょっとエイリアンみたいで気味が悪いような気もしますが、
蟹とはそういうものです。また人とは残酷なものです。
あなたも例外ではありません。
えっ?ベジタリアン?同じです。植物も生物です。
人は生き物を食って生きるのです。
コホン、話がそれました。
さて、この甲羅のフタがとれればもう後は簡単ですね。

3.半身に割る

香箱蟹半身

甲羅にミソがついている場合もあります。
また甲羅の裏側の薄皮の内側に白い部分がありますが、
これも食べられます。
甲羅はそのまま別にとっておいてその上に
ミソや蟹子などをまとめて載せてもOKです。
そして、オレンジ色の内子を別に取ってから、そうですね、
両手でそれぞれの足の根元をつかんで
板を割るように蟹を縦に折ってください。割るという感じです。
後は適当に足と胴体の部分を身を取りやすいように切るだけです。
香箱蟹の真骨頂はあくまでも蟹子にあるので、
身の部分は付け足しみたいものですが、少量とはいえ味はいいですよ。
もったいないから身もぜひ取って食べてみてください。
蟹1杯で小皿1皿分程度の身しか取れませんが。

ご注意: 香箱蟹は乱獲を避けるため毎年1月10日で漁が締切りとなります。したがって注文も年末からそれまでです。オスであるズワイガニのほうはもう少し期間が長いとのことです。
年末、北陸に旅をしてカニを食ってきた!と誇れるのは、このコウバコを食したもののみです。ズワイガニだけ食べてきて「えっ、なにそれ?」なんていっても後の祭り。北陸のカニを経験した、とは認められませんので、その点、よろしく。

(07/04/30追記) (06/03/12UP) (06/01/09) (05/12/30・05/12/31撮影)